スペイン語の外部検定試験について

  学外の機関が行っている主なスペイン語検定試験としては、以下のものがあります。

1. DELE (Diploma de Español como Lengua Extranjera = 外国語としてのスペイン語検定試験)

2. SIELE(Servicio Internacional de Evaluación de la Lengua Española = スペイン語国際評価サービス)

3. 西検(スペイン語技能検定試験)

   学内のスペイン語の授業の成績は、他の科目と同様に、成績評価分布の目標値を達成するために個々の担当教員が試験問題の難易度等を操作することがあるため、受講者の語学力のレベルが必ずしも正当に評価されるとは限りません。それに対して、外部検定試験の合否は、客観的な指標に基づいた絶対評価ですので、受験者の語学力のレベルは正しく評価され、証明されます。

  そのうえ、こうした外部検定試験の一定以上のレベルに合格すれば、スペイン語圏への留学やスペイン語圏との関わりが深い企業などへの就職の際には大きく役立ちます。スペイン語学習に意欲や目的意識を持って取り組んでいる人には、外部検定試験の受験をお勧めします。

   しかしながら、筑波大学は、スペイン語の外部検定試験に関しては、ドイツ語やフランス語のそれとは異なり、受験を希望する学生に対して大学として公的に便宜を図ることをしておりません。申し訳ありませんが、受験を希望する場合は、下記のホームページを見て、個人の資格で手続きをしてください。以下は、スペイン語連絡担当責任者(宮﨑)からの、個人的な情報提供です。

1.DELE (Diploma de Español como Lengua Extranjera)

https://tokio.cervantes.es/jp/dele_diplomas/information_diplomas_spanish.htm

  DELEは、欧州評議会によって策定された「欧州言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages, CFER)」に沿ってスペイン語運用能力を測る検定試験です。スペイン文部省の管轄下に、スペインの公的文化機関であるインスティトゥト・セルバンテス Instituto Cervantes が、全世界で実施しています。日本では、東京で年3回(5月、7月、11月)、大阪・京都・名古屋で年2回(5月と11月)、福岡(5月)と広島・仙台・沖縄(11月)で年1回実施されています。難易度によってA1, A2, B1, B2, C1, C2の6つのレベルに分かれているので(A1が最低レベルでC2が最高レベル)、受験申込に際しては、自分に適したレベルの試験を自分で選ぶ必要があります。

  この検定試験は、設問文や問題文および口述試験での問いかけはすべてスペイン語で、解答もすべてスペイン語で行うことが要求されます。スペイン語話者と(文書または口頭で)コミュニケーションを取る能力を測定する試験であって、その最高レベル(C2)の試験に合格することは、スペイン語圏の企業や機関で(母国語との間の通訳や翻訳だけではなくて)スペイン語母語話者と全く同じ仕事ができるということを意味します。そのため、次のような人にお勧めします。

・スペイン語圏の大学への留学を考えている人。

・スペイン語圏での就職・就労を考えている人。

  この試験に興味を持った人は、外国語センターの向かいのメディア・ライブラリーに、試験対策用の問題集をいくつか置いていますので、まずはこれを見てみることをお勧めします(この検定試験は、かつては inicial-básico-superior の3段階だったのですが、2008年から、今の6段階<A1~C2>になりました。 メディア・ライブラリーには、古い試験に対応した問題集もまだ置いてありますので、注意してください)。

  大学に入ってからスペイン語を学び始めた1年生は、A1の問題でさえも、まだほとんど解けないと思います。
  A2の問題を解くには、大学のスペイン語の授業で今使っている教科書 Gramática elemental del español の内容をすべて理解できていて、出てくる単語や活用パターンも完璧に頭に入っている必要があります。

  この検定試験の試験問題やレベル区分は、ヨーロッパの言語を母語とする人に対するスペイン語教授法を前提としているため、日本の大学でスペイン語を学んでいる日本人学生が独力で試験勉強をするのはかなり困難です。
  筑波大学生の場合、外国語センターの「応用スペイン語」(授業はすべてスペイン語で行われます)を受講すれば、ある程度役に立ちます。お金に余裕があれば、東京のインスティトゥト・セルバンテスなど、欧州言語共通参照枠に準拠したレベル設定をしている語学学校で、スペイン語の授業を受講してみても試験対策コースがありますので、受講してみてもよいかもしれません。

インスティトゥト・セルバンテスのスペイン語コース

通学コース

https://tokio.cervantes.es/jp/spanish_courses/learn_spanish.htm

オンラインコース

https://tokio.cervantes.es/jp/spanish_courses_online_ave/spanish_online_courses_ave.htm

  また、インスティトゥト・セルバンテス内のセルバンテス書店では、DELE試験対策用の問題集を、いろいろ売っています。中には、日本人向けに、日本語の詳しい解説がついているものもあります。

  ホームページは、http://interspain.ocnk.net/

2. SIELE (Servicio Internacional de Evaluación de la Lengua Española)

https://tokio.cervantes.es/jp/siele_spanish_certificate/info_siele_spanish.htm

SIELEもDELEと同様に、欧州言語共通参照枠CFERに沿ってスペイン語運用能力を測る検定試験です。インスティトゥト・セルバンテスが、メキシコ国立自治大学、サラマンカ大学、ブエノスアイレス大学(最後の2つの大学は、本学の協定校でもあります)と共同で主催し、全世界で実施しています。日本では、東京で毎月10回以上実施されていて、都内在住者は、リモート受験を選択することもできます。受験機会が非常に多いことが、この試験の特徴です。

 受験申込に際しては、DELEや西検とは違って、受験する級位を自分で選ぶ必要がありません。すべての受験者が同じ問題を解いて1000点満点でスコアがつき、それに基づいてA1からC1までの5段階のレベルで評価されます。

 試験の内容は、DELEと同様、設問文や問題文および口述試験での問いかけはすべてスペイン語で、解答もすべてスペイン語で行うことが要求されます。スペイン語話者と(文書または口頭で)コミュニケーションを取る能力を測定する試験です。

 結果が早くわかるのもSIELEの特徴で、3週間以内に、Webサイトの個人アカウントから、試験結果の証明書を印刷できるようになります(DELEは3か月かかります)。

SIELEのデメリットは、C2レベルが測定不能とされていることです。C2レベルに達している人が受験してもC1と判定されますので、自分は確実にC2レベルに達しているという自信のある人や、C2レベルを証明する必要のある人は、DELEを受験してもらうしかありません。

もう一つのデメリットは、証明書の有効期限が5年である、つまり5年経ったら失効するということです。TOEFLのスコアの有効期限が2年であることを考えれば、5年はむしろ長いかもしれませんが、DELEは有効期限が無くて一生有効なので、それと比べるとデメリットがあることは否めません。

  以上のことから、1年以内の短期留学のためにスペイン語検定試験を受験するのであれば、DELEよりもSIELEのほうが良いし、SIELEで十分であると言えます。

 本学のスペイン語のカリキュラムでは、留学のためのスペイン語力証明として最低限意味のあるA2レベルに到達できるのは、2年次の春学期の授業を終えてからになります。3年次の秋学期に渡航しようとするなら、交換留学の募集の締め切りが2年次の12月なので、DELEを受験して結果を待つ時間はありません。受験できたとしても、レベル選びを間違えて実力よりも高いレベルを受験して不合格になった場合、スペイン語検定試験をまったく受験していない人と同等に扱われてしまう恐れがあります。SIELEなら、そのような心配はありません。

 スペイン語圏の大学で、スペイン語を母語としない入学・留学希望者に対して、DELEの証明書の提出を求める大学はまずありません。ほとんどの場合、語学要件はCFERのレベルで提示されるのみですし、DELEに言及している場合も、o equivalente(およびそれ相当)と付記されているのが普通です。最近では、SIELEが付記されるケースも増えてきています。

 学位を取得するための長期留学でも、おそらくSIELEで十分です。SIELEの受験後5年以内にスペイン語圏の大学で学位を取得できる人もいるでしょうし、たとえできなかったとしても、学位請求時に改めて語学能力の証明を求められたりはしません。それに、大学院博士課程であっても、C2レベルが入学要件になっているところは、まずありません。

 SIELEの試験内容はDELEと似ているため、必要な試験対策も似ています。DELEの特定レベルのための受験勉強をしていれば、たいていの場合、SIELEで同レベルのスコアを獲得できます。しかし、両者には微妙な違いもあるため、SIELEを受験する際にはSIELEのための試験対策もした方が良いのは確かです。

 SIELEに特化した試験対策問題集としては、例えば、以下のものがあります。

A. M. Pérez Fernández y P. Bartolomé Alonso, Preparación al SIELE A1-C1, Madrid: Edelsa, 2021. https://interspain.ocnk.net/product/5416

 また、CEGLOCで秋学期に開講される「応用スペイン語作文」(火曜2限)は、SIELEの試験対策の授業となっていますので、興味のある人は受講してみてください。

https://kdb.tsukuba.ac.jp/syllabi/2022/3666032/jpn/0

3. 西検(スペイン語技能検定)

https://casa-esp.com/

  財団法人日本スペイン協会が、日本国文部科学省の認定と後援の下に、日本全国で実施しているスペイン語検定試験です(成績優秀者には、文部科学大臣賞や、日本スペイン協会代表理事賞が授与されます)。
  この検定試験の5級以上に合格すると、CEGLOCの「基礎スペイン語AI」と「基礎スペイン語AII」の単位(計2.0単位分)として認定されます。

 北海道、仙台、秋田、東京、新潟、金沢、静岡、名古屋、関西、広島、福岡、沖縄の全国12か所で、6月と12月の年2回、実施されています(1級は12月のみ)。2級以上は、7月と1月に2次試験があります(1級は1月のみ)。難易度によって6級から1級まで6つの級に分かれているので、受験申込に際しては、DELEと同様、自分に適したレベルの試験を自分で選ぶ必要があります。ただし、試験開始時刻が級によって違うため、複数の級を同時に受験することも、場合によっては可能です。

  この試験は、スペイン語の口頭のまたは文書によるメッセージを、スペイン語のわからない日本語話者に伝達したり、その逆をしたりという技能を測定する性格が強く、1級に合格することは、スペイン語―日本語間の同時通訳や専門書の翻訳ができるということを意味します。そのため、次のような人にお勧めします。

・日本の企業で、スペイン語の使い手として働きたい人。

・日本で、スペイン語―日本語間の通訳・翻訳業およびスペイン語圏から来た人のための観光ガイド業などに従事したい人。

  現在では、日本の企業や大学でも次第にDELEが認知されるようになってきたのに対し、スペイン語圏での西検の認知度は低いので、有用性という点から見れば、DELEのほうが上だと言えます。

  試験対策としては、これもメディア・ライブラリーに、西検試験対策用の問題集をいくつか置いていますので、見てみてください。
  西検は、日本の大学で伝統的に行われている、日本人にとって理解しやすい文法事項から順番に教えていくという教授法を前提としているため、こちらのほうが、勉強はしやすいと思います。
  大学に入ってからスペイン語を学び始めて、大学のスペイン語の授業だけしか受けていない人でも、1年次の12月には6級の試験に合格し、2年次の6月には5級に合格する、といったようなことが、ある程度現実味を帯びてきます(少しは試験対策用の問題集を解いてみることは必要かもしれませんが)。ただし、受験してから結果がわかるまで一か月半ほどかかるので、2年次の12月に4級(DELEのA2に相当するとされています)に合格したのでは、交換留学の募集締め切りに間に合いません。

  また、6級合格のためには、教科書の Lección 6 くらいまでマスターしていれば十分ですが、5級合格のためには、最低限、Lección 15 まではマスターしておく必要がありそうです<ただし、関係詞は不要>。4級に合格するには、今使っている教科書を最後までマスターしておく必要がありますし、「応用スペイン語」か、比較文化学類の「専門スペイン語I」を受講しておいたほうがよいでしょう)。

  西検の試験対策用の問題集は、一般の出版社が出していて、大学の丸善や、友朋堂など一般の書店で扱っているものもあります。